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第12話 | (ころもかけのまつ) 衣かけの松(豊岡村) |
昔むかしのある日、夕もやのかかる頃、今の獅子ケ鼻公園の頂きの岩に、衣も色褪せて見るからに哀れな様相の僧がひとり腰を降ろしておりました。しばらくすると、僧はやおら立ち上がり、急な岩山を降り始めました。身の毛もよだつような絶壁を、あやうい足取りで降りて行き、突き出た大岩石までくると、今度はノミを取り出して岩に一心不乱に文字を刻み始めました。 世をうし乃 はな見車に法のみち ひかれてここを 廻りきにけり 刻み終わると、僧は頭上を覆う松の枝に身の衣をかけ、にっこりとほほえむと、いずこともなく消えていきました。やがて衣は朽ち果て、今はこの衣かけの松だけが、獅子ケ鼻公園にそびえています。 かの僧は、弘法大師。八百八谷ある霊山をもとめて寺院建立をおこしましたが、獅子ケ鼻は一谷足らず心ひかれながらも下山し、その後、高野山に登ったと伝えられています。 (「豊岡物語」より) |
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