虫生の川の南に鐘掛け山という険しい岩山が高くそびえています。
昔、この岩山に一人の美しいお姫様が住んでおり、毎日麓の川に下りてきては水を汲んで行くのでした。
しかし、そのお姫様の姿を誰一人として見た者はありませんでした。そしていつからか「姫の姿を見ると不幸になる。見ないほうがいいよ…」という噂が立つようになりました。
若者達の間ではこの噂が信じられず、反対にお姫様の姿を見たくてたまらなくなり、ついに険しい岩山を登り始めました。しかし、もう一息というところでどうしても岩山を登ることができませんでした。若者達は腹立ちまぎれにお姫様が毎日水を汲みにくる道を壊してしまいました。
数日後、若者達は様子を見に行くと、今度はなんなく登れました。喜んで家の中を見ると、お姫様の姿はどこにもなく、部屋の壁には文字が残されていました。「私は水がないので、これから生きて行けません。ただ死を待つばかりです。私は一生この川に腹の赤いウナギになって過ごします。赤腹のウナギがここに住むかぎり、この村にはお金持ちはでないでしょう。」読み終わった若者たちは、皆顔を見合わせて自分達のしたことを悔やみ、悲しみながら山を下りてきました。
(「ふるさとの土」より) |