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第48話 | (へびのたたり) 蛇のたたり(竜洋町) |
竜洋町掛塚に昔、町一番といわれるほどの資産家があった。100坪以上もある大きな本宅の横には、白い土蔵がいく棟も並んでいたという。この家には、角八という下男がいた。彼はまだ20歳ぐらいの青年で、主家の財産を自慢して「俺の家が先だ。」などと、いつも村の物事で先を争い、悪い仕事となると、「俺の家はそんなことはしなくていいんだぞ」とわがままいっぱいを言うので、村の人々から嫌われていた。 ある日、角八が2番目の土蔵の扉をあけると、中から太い蛇がのたりと出てきたので彼は棒でなぐりつけた。蛇は長い首をもたげて逃げかけたので、彼はさらになぐりつけた。すると、蛇は、必死になって棒にぐるぐる巻き付いたので今度は、斧を持って来て、棒ごと蛇をズタズタに切ってしまった。そして、蛇の死骸をかき集めて、裏の畑に穴を掘り、その中に全部埋めてしまい、笑っていたという。次の朝角八が昨日の扉を開けると、また太い蛇が出てきたので、彼は昨日と同じように、蛇をなぐりつけ、ズタズタに切り殺して埋めてしまった。しかし彼は2匹も殺して埋めてしまったのかと思うと、何か気味悪くて笑えなかった。 さらに太い蛇は土蔵の主だなどという話を聞いたりすると、いっそう気味が悪くなった。3日目のことであった。角八が何気なく、昨日と同じ土蔵の扉を開けるとまたも、太い蛇が出てきた。しかも同じ太さの蛇なのである。彼はみるみるうちに真青になってしまった。 たしかに昨日と同じ蛇である。「あれほどズタズタに切って、2度も土の中深く埋めたのにそれが生き返ってきたのか」と思うと、体がブルブル震えてきて角八は、もう蛇と戦う気力はなかった。土蔵の扉もあけたままで、逃げるように下男部屋まで走ってくると、ふとんをかぶって寝てしまい、角八は「蛇が蛇」と40度の熱にうなされ続け、7日目にとうとう死んでしまった。続いて家族の人々も、不思議な熱病にかかって、残らず死に絶えてしまった。その後、村の人々は蛇のたたりだと恐れ、この家を継ぐ人も、資産を管理する人もなく、とうとうこの家も長い間空家になり、立ち腐れて倒れてしまい、この広い古屋敷をだれも開墾する人もなく、荒地になったということである。 (「ふるさと竜洋改訂版」より) |
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