今から150年程昔、三川地区の幕ヶ谷に現在の南北に通っている道ができました。
この新しい道が出来る前は、山の中に続く道があり、山の中腹の道端に、お地蔵さまがまつられていましたが、道が新しくなったので、お地蔵さまだけが取り残されてしまいました。
ある日、ある家の主人の夢枕にこのお地蔵さまが現れ、「主人よ、わしは旧道にまつられている地蔵だが、毎日さみしく過ごしている。人通りのある新道の方へ移してもらいたい。頼むぞ」というお告げがありました。そこで、主人は翌朝、早速、山のお地蔵さまを背負って新道の方へ移してあげました。
ある秋の日のことです。あの時の主人が野良から帰る途中、ふと見ると、近所の子供たちがお地蔵さまを縄でしばり、引きずり廻して遊んでいました。これを見てびっくりした主人は、「何ということをするのかお前たちは!」と子供たちを厳しく叱って、お地蔵さまにお詫びをし、元の所に納めました。
その夜、またお地蔵さまが夢の中に現れて「主人よ、今日は、子供たちと遊んでほんとうに楽しかった。それをあんなに叱らなくて良かった。わしは子供たちが好きだから、心配しなくても良い」とお告げがありました。
それからは、お地蔵さまの前で楽しそうに遊ぶ子供たちの姿が見られ、お地蔵さまも子供たちの姿を楽しそうに眺めていました。
(袋井の昔話より) |