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中遠昔ばなし

第78話   (いぼがみさま)
いぼ神様(森町)

いぼ神様(森町)

 昔、森の城下(じょうか)に剣をとっては、負けたことのない、強いさむらいがおりました。このさむらいの家来(けらい)に、主人の剣の強さをねたんで、何とかして一太刀(ひとたち)でもいいからきりつけ、きずをおわせてやろうと思っている男がおりました。
 いつもすきをうかがっていましたが、剣の名人である主人には、きりかかるすきがありませんでした。
 刀を持っていない時ならおれのうででもきることができるだろう。それには、ふろに入っている時がいいぞ、と思いつきました。
 ある夜、その男は、ひきょうにも主人がふろに入ったのをたしかめて、そっとしのびこんで、すざまじいいきおいできりつけました。
 いかに名人でもお湯の中では、身をかわすこともできずきられてしまいました。
 ほかの家来(けらい)たちやお城の人たちは、「刀さえ持っていたなら、そうむざむざときられはしなかったのに」ときった家来(けらい)をにくみ、主人の死を悲しみました。
 そして、一藤(いちふじ)(今の森幼稚園(もりようちえん)の所)にお墓をつくりましたが、のちにあん山に登る途中に移され、今では、梅林院(ばいりんいん)の中におかれています。
 今も、小さなほこらがたっておりますが、ここに祭(まつ)ってある刀で、体にできた「いぼ」をきるまねをしておいのりすると、いぼはきれいにとれるといわれて、お参りする人がたくさんありました。そのため町の人たちは、「いぼ神様(いぼがみさま)」とよんでいます。

(「森町ふるさとの民話」より)

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