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中遠昔ばなし

第81話   (たかひらさんのすずのおと)
高平山の鈴の音(森町)

高平山の鈴の音(森町)

 東海地方で最も大きいといわれている青銅の大仏様で知られている下飯田の遍照寺(へんしょうじ)には小さなお堂があります。
 このお堂は、開山(かいざん)の木喰秀海(もくじきしゅうかい)というお坊さんをまつってある開山堂です。伝説によりますと秀海上人(しゅうかいしょうにん)は、鈴をならし念仏をとなえながらここにうめられたということです。
 関東大震災(大正12年)の2、3年前のある冬の夜のことです。山梨に住むあるおじいさんが、便所に起きたとき、どこからか、鈴の音がかすかに聞こえてきます。不思議に思いましたが、その夜は、そのまま寝てしまいました。
 ところが、次の夜も、その次の夜も鈴の音は聞こえてくるではありませんか。そこで、近所の人たちに話し、ある夜、その鈴の音をたよりに、鈴の音の主(ぬし)をさがすことになりました。
 鈴の音に耳をすましながら進んでいくと、だんだんと高平山(たかひらさん)に近づき、さらに山に登っていきます。そして、その音は、開山堂に消えていきました。
 この話が広まっていったとき、村の人たちはいろいろなことを言いました。
 「秀海上人がうめられるとき、『わたしがふった鈴の音が聞こえたら、もう一度ほりかえして新しいお堂を建ててほしい。』と言った。」
 「『日本の国に大きなできごとが起こる前にわたしが鈴をふるから、鈴の音が聞こえたら気をつけなさい。』と言った。」
とか言いあいました。
 関東大震災の2、3年前から聞こえた鈴の音も、大震災の後、ぴたりとやんで、それ以後聞こえませんでした。

(「森町ふるさとの民話」より)

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