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中遠昔ばなし

第94話   (いづかそん)
井塚尊(袋井市)

井塚尊(袋井市)

 今井地区の小山は昔、小山村といい、ここに代々小山村の名主をしていた「大場九佐衛門(おおばくざえもん)」という人がいました。
 小山村は、土地がやや高く、毎年日照りに悩むことが多く、村人は苦しんでいました。田植えなどにも水がなくて大変困り、雨の降らない時はお宮に行って、神様に「どうか雨を降らせてください。」とお願いしたりするのですが、それはなんの効き目もなく、村の人達はほんとうに困っていたのです。
 特に名主の九佐衛門は心を痛め、「とにかく田んぼに水が入るような堀を造らなくては」と堀を造る事を考えました。太田川の水を深見から太田、延久、徳光の各部落を通り、小山、土橋へと引く堀を造る決意をしました。
 そしていよいよ工事に入ったのですが、工事は田畑をつぶしたり、屋敷をけずったりしたので、みんなから大変恨まれました。  それにもかかわらず九佐衛門は、この仕事はみんなの為になることだと自分に言い聞かせ、ある時は人夫を指示し、ある時は自分から鍬を使い掘ったりして、この仕事に打ち込みました。
 中でも、家・屋敷にかかった人からは、度々苦情が出ましたが、九佐衛門はただ、「この仕事が完成するまでは許してくれ。工事が終われば私はどうなっても良いから。」と言い、ある時は「死ね」と言われても顔色も変えず、ただ目的に向かって一心に鍬をふるいました。
 そして何年かの苦心の末、この工事は遂に完成しました。
 九佐衛門は、堀に勢いよく流れる水を見て、「とうとうやった。もはや私は、この仕事が終わればすることもない。村の衆とも約束したから死のう・・・・・・。」と工事の為の迷惑をわびる為に、妻や子供に別れを告げて、用水(堀)の見える「杉の木」という所へ行って自分で穴を掘りました。これを見守る村人達に九佐衛門は、「私はこの穴の中で死ぬ。私が死んでから後に、雨が降らない時があったらいつでも降らせるから心で伝えてくれ。またこの鐘の聞こえる間は、私は生きていると思い、この音が聞こえなくなったら死んだと思ってください。」と言って穴に入り、念仏を唱え、鐘をたたいていたそうです。
 この鐘の音は、数日の間、夜となく昼となく響き、この村を富の村にするように、高く、低く、遠くまで響きました。
 数日して鐘の音は聞こえなくなりました。村人達は先を争うようにして穴の所に行ってみると、九佐衛門の死顔があまりにも神々しくて、自然に頭が下がったのでした。
 それまで、小山村は磐田郡(いわたごおり)で一番お米の出来が悪かったのですが、堀ができたその年から郡一番の良いお米の取れるところとなりました。それと共に、人々は九佐衛門の心をありがたく思って、徳光の西に社を建てて「井塚尊」と名付けてねんごろに祀りました。

(袋井に伝わる昔話より)

井塚尊
井塚尊

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