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第99話 | (こうぼういど) 弘法井戸(森町) |
草ヶ谷(くさがや)の谷組(やぐみ)の小高い丘の上に金山(かなやま)神社があります。その裏手(うらて)に弘法井戸と呼(よ)ばれる小さい井戸があります。出る水は少ないけれど、きれいなわき水が出ています。この井戸について、次のようなお話があります。 今から千二百年くらい前のある夏の暑い日のことです。旅の坊さんがやってきて、一けんの大きな農家に立ち寄り、 「一ぱいの水をいただけませんか。」 とたのみました。家の人は、 「お気のどくですが、この水をあげてしまうと、遠くまでくみにいかなければなりませんので、あげられません。」 とことわりました。 仕方(しかた)なく坊さんは、つかれた足を引きずりながらもう一けんの小さな家に立ち寄りました。 そこの家のおばあさんは、たいへん気のどくに思って、家の中に入れ、水がめの底に残っていたわずかな水を茶わんにうつしてさし出しました。 「ああ、おいしかった、おいしかった。生きかえったようです。もう一ぱいいただけますか。」 といって空(から)になった茶わんをさし出しました。 「私の家の井戸はかれて出ません。今から村はずれの井戸までくみに行ってきますから、しばらくお待ちください。」 と出かけようとしました。 わけを聞いた坊さんは、持っていたつえでおばあさんの井戸の上の方を二、三回つつきました。すると、不思議(ふしぎ)なことに、つついたくぼみがしめってきたかと思う間もなくきれいな水がふき出し、みるみるうちにいっぱいになりました。このときからおばあさんの井戸だけは、いつでもきれいな水が出るようになりました。 「あの坊さんは、弘法様にちがいない。」 と言い、井戸の名前もだれ言うともなく「弘法井戸」と呼ぶようになったということです。 (「森町ふるさとの民話」より) |
金山神社 | 言い伝えられている井戸 |
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