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中遠昔ばなし

第100話   (おまつりにかつやくするてんぐ)
お祭りに活躍する天狗(袋井市)

お祭りに活躍する天狗(袋井市)

 上山梨の氏神様「山名神社(やまなじんじゃ)」の大祭は、毎年7月中旬に、祇園祭りとして行われます。このお祭りの中心は御輿(みこし)の御渡り(おわたり)と天狗の活躍であると言われています。
 天狗の姿は赤い顔で鼻が高く、頭とあごに白く長いひげを生やしたお面をかぶります。このお面は真っ赤で、つり上がった太いまゆ毛、むき出た目、一文字の口、高い鼻と、まともに見ると大人でも恐ろしいものです。そして金銀をちりばめた衣装を着て腕をまくり、たすきがけ、足には脚絆(きゃはん)をつけ、わらじばき、手には「むち」を持っています。
 本当に勇ましく、どんな活躍でもできる姿をしています。
 天狗は氏子の中から選ばれ、お祭りが近づくと、「今年は、天狗に誰がなるだろうか」と街中の話題になります。
 お祭りの初日、神社でクジを引きますが、氏子の中から選ばれたお役の中で「白丁(はくちょう)」(※注1)の中の一本のクジが当たった人が天狗になるのですが、天狗が一番人気があります。
 天狗は「猿田彦命(さるたひこのみこと)」という神様で、御輿がお旅所(たびしょ)を往復する道中、悪者やじゃま物を追い払う露払い(つゆはらい)の役目もあります。
 天狗が活躍するのは、広い神社の境内をはじめ、御渡行列の往復四キロ余りの長い街中の道中です。
 天狗の持っている「むち」で頭をなでてもらうと、悪い病気にかからない。子どもは、病気にもならず無事に育つと言われています。このため、赤ちゃんや幼児が頭をなでてもらっています。今では大人や、遠くから見物に来た人もなでてもらっています。  あちらこちらで天狗を呼ぶ声、頼む声等入り乱れて混雑の中を、抱かれた赤ん坊の頭をやさしくそおっとなでてやったり、そっと頭を下げる大人の人や学生、子どもへと頭をなでていくのです。
 夏の強い日差しが西へ傾く頃、花火の音を合図に山名神社から、上町のお旅所まで天狗を先頭に大きな御輿、そしてお道具等の長い行列がつづきます。
 なお、神社の始まりは、養老年間(※注2)と言い伝えられています。

「袋井に伝わる昔話」より
※注1:神事の際、白い衣を着て物を運ぶなど雑用に従事するもの
※注2:717〜723年(奈良時代前期)

山名神社
山名神社

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