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第105話 | (てんぐのひ) 天狗の火(森町) |
わたしは、中飯田(なかいいだ)に住(す)む年よりだが、わたしが子どものころ、実際(じっさい)にあったことをお話ししましょう。 あれは、わたしが、たしか十二才の時だった。それは、おそろしい目にあったことがある。 友だち二人とわたしの三人で、川えびをつかまえようと、ある夕方、太田川へ出かけ、川の浅い所をせぎ、そこへ、うげ 【注】をかけた。 ところが、夜中の十二時ごろ、はげしい雨がふってきた。水が出て、 うげ が流されてはたいへんなので、三人は提灯(ちょうちん)をつけて、 うげ を取り出しに川へ出かけて行った。 すると、そのとき、川下の山の上に、ちらちらと小さな火が見え、だんだん近づいてくるような気がした。それを見て、こわくなってきたので、いそいで うげ を取り出そうとした。 ところが、その火は、どんどん近づいてきて、みるみるうちに大きくなり、川の石がひとつひとつはっきり見えるようになってきた。 わたしたちは、こわくて、もう、 うげ も提灯も全部投げすて、まるくなって家へにげてきた。それは、こわくて、どこの道をどのように通ったかもわからなかったし、声も出せないほどだった。 帰ってきて、家の人にふるえながら話すと、家の人は、 「それは、天狗の火だ」。 と言って教えてくれた。おとなの人たちといっしょに、こわごわ、また川の方へ行くと、 遠くの山の方に、火が四つにも五つにも分かれて、ちらちらともえて見えた。 今は、もうこんなことはないが、むかしには、たびたびあったことだ。 【注】 うげ … 竹で作った魚をとる道具 (「森町ふるさとの民話」より) |
うげ |
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