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第115話 | (みわじんじゃとおもいがわ) 三輪神社とおもい川(袋井市) |
笠原地区の三輪には、三輪神社とその前におもい川があって、こんなお話が残されています。 昔、この村に甚左衛門(じんざえもん)という長者がおりました。この長者には「おたえ」というたいへん美しく、その上賢くて優しいという申し分のない娘がおりました。それだけに 「おたえさんはいい娘だ、私の親戚の男を婿さんに貰ってくれませんか」とか 「私と結婚して下さい。どんな事でもいたします」と、結婚を申込む人がたいへん多かったのですが、話はなかなかまとまりませんでした。 そのうちに、ある夜一人の立派な男が訪ねて来て 「どうか、私を婿にして下さい」 と申し出ました。 おたえはその男らしい立派な姿に、心が動いたのですが 「でも急にそんな事を言っても……」 と返事をにごしていました。 すると男は、翌る夜も、その次の夜もと、毎晩のようにやって来ては、 「是非婿にして下さい」と言うのです。 けれどその男の人は名前も、住んでいる所も、又身分も何もいいませんでした。 おたえは“これは変だ”と思ったので、ある夜男の袖に糸のついた縫針をさして置きました。 男が帰って行くと、その針についた糸はいつまでもいつまでもほどけて、ついに三束(三輪)の糸が使われてしまいました。 次の朝、おたえは「どこまでだろう」と糸をたぐって行くと、やがてこんもりと茂った森の中の神社のお社の中に入ってしまいました。 “それでは、あの方は神様だったのか”とおたえはびっくりしました。 それでも勇気を出してきいてみました。 「もしもし神様、昨夜の方は神様でございましたか」と言いながら丁寧に頭を下げました。 すると奥の方から 「見破られた上は仕方がない。一週間後に上池(かみいけ)に来てくれ、私の姿を見せるから」 と厳かな声がするのです。 「一体どういうことだろうか」 おたえは不審に思いながら家に帰りましたが、もうその夜からは男は来ませんでした。 一週間後、おたえは神社の横の上池に行ってみると、池の中には大きな大蛇が一匹死体となって、ぽっかり浮かんでいました。よく見るとその身体には一本の縫針が深くささって、その針の糸は岸の柳から堤へと続いているのでした。 おたえはほんとうにびっくりして、急いで家に帰り父の甚左衛門に話しました。 そして大蛇の葬式をねんごろに行い丁寧に祀ってやりました。 それ以来、この村を「三輪の村」といいその神社を「三輪神社」と呼び、男が毎夜通って来た川を「おもい川」と呼ぶようになったという事です。 (「袋井に伝わる昔話」より) |
三輪神社の鳥居 | 現在の三輪神社 |
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